サワダ マサヒロ
  澤田 雅弘   文学部 書道学科   教授
■ 標題
  模勒・鐫刻で付着する他者要素―真賞斎帖・停雲館帖・三希堂帖所刻の二王書跡、及び美人董氏墓誌模刻を例に―
■ 概要
  模勒を経た刻帖や模刻の字跡には、程度の差こそあれ鉤模者鐫刻者の技術や解釈が反映することは避けがたい。本稿は技術や解釈の反映程度を検証する為に、次の二つの方法を用いた。①真賞斎帖・停雲館帖・三希堂石渠宝笈法帖に収刻する「姨母帖」「初月帖」「廿九日帖」の三本を、その底本である唐模本(万歳通天進帖)と対照する方法、➁美人董氏墓誌の原刻本と模刻本と対照する方法。その結果、技術や解釈の反映を具体的に検出できたほか、①においては、真賞斎帖と停雲館帖には類似が多く相違は部分的で、停雲館帖は唐模本と真賞斎帖との差異を増幅する傾向が強いことから、停雲館帖本が底本としたのは真賞斎帖本であったか、真賞斎帖本が用いた鉤模本を転用した可能性が高い可能性を類推した。また三希堂帖本では「姨母帖」「初月帖」の精度は真賞斎・停雲館両帖に著しく劣る一方、「廿九日帖」は両帖を凌ぐ高い精度が認められ、「姨母帖」「初月帖」とは明らかに双鉤者が別であることを類推した。また、以上の検証を踏まえて、集王聖教序の同源字間に認められる微差を、「集字者懐仁が微調整した結果」とする畢羅(pietro De Laurentis)氏の説に対する反論も附記した。
  単著   人文科学研究所)研究報告書 中国鐫刻基盤研究班(代表澤田   大東文化大学人文科学研究所   19-40頁   2022/03


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