サワダ マサヒロ
  澤田 雅弘   文学部 書道学科   教授
■ 標題
  隋代墓誌刻法における楷書収筆の新表現-太僕卿元公墓誌以前の三角形収筆について-
■ 概要
  太僕卿元公墓誌(および夫人姫氏墓誌)には、楷書の横画収筆を三角形に作る表現が極めて顕著である。その三角形表現の太僕卿元公墓誌以前の状況を考察するために、稿者が実見した原拓75誌と、これを除く原寸大の影印50誌(部分のみの影印1誌を含む)計125誌中に、元氏墓誌の三角形収筆に類する表現を一定量検出できる5件の墓誌(長孫懿・楊异・楊休・韋夫人元咳女・尉富娘)について、それぞれの収筆の様態を分類整理した。この5誌における三角形の収筆表現は、太僕卿元公墓誌同様、同誌中に混在する諸刻法の1つ、すなわち、旧来の一般的な収筆表現と併存する非主流の新興表現として存在した。その状況は、混在する各種刻法と同様に筆跡に従属せずに刻者が自律的に奏刀した結果とみられ、後世に普遍化する楷書収筆筆法の表象を先取りした形状、すなわち筆法に先んずる刻法のひとつである可能性を示唆している。なお、楊休墓誌以下の3誌には太僕卿元公墓誌元氏墓誌同然、不自然に誇張された三角形が多出するのは、その自立的刻法が観念的に継承された結果と考える。
  単著   大東書道研究   大東文化大学書道研究所   (24),40-53頁   2017/03


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