サワダ マサヒロ
  澤田 雅弘   文学部 書道学科   教授
■ 標題
  隋・太僕卿元公墓誌の収筆に見る楷書刻法の新表現
■ 概要
  太僕卿元公墓誌に混在する諸刻法のうち、最も広範囲に分布する二種の刻法には、主要な横画末(ときには全ての横画末)に三角形の筆押え(収筆で筆鋒を突き戻すように挫いた際に現出する痕跡)を表現する特色がある。その収筆の形状は現在のわれわれの楷書書法の表象に一致するが、北朝から隋代石刻にあっては実は極めて特異である。しかも同誌には不自然に誇張した形状も少なからず現れる。初唐にいたっても、筆押えを明確に刻出する事例は、右下に抜く収筆の形状と共存する程度であったことが観察できることから、太僕卿元公墓誌(その夫人の姫氏墓誌も同然であるが、紙幅上姫氏墓誌については考察を割愛した)に顕著に表現される三角形の筆押え表現は、いわば後世の石刻楷書表現を先取りした刻法であり、三角形に類型化したその収筆表現は、筆跡に従属せず自律的に刻者が案出した楷書の新表現である可能性が高いことを論じた。
  単著   大東書道研究   大東文化大学書道研究所   23,36-47頁   2016/03


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