サワダ マサヒロ
  澤田 雅弘   文学部 書道学科   教授
■ 標題
  道因法師碑における刻法の混在と混在状態が提起する新たな論点
■ 概要
  初唐の名家、欧陽通(?~691)の名碑である道因法師碑の刻法を精査すると、主な刻法だけでも五種が混在すること、すなわち、該碑は五名以上の刻者が奏刀したことを明らかにした。この新知見から以下の新たな論点を提起し、それぞれに私見を論じた。[1、附刻される刻者の地位]該碑の鐫刻には五名以上の分業であるにもかかわらず、末尾に刻者を「華原県の常長寿・范素の鐫」と明記する。したがって、この両名は実際の刻者数を示していないばかりか、この両名が奏刀したとは限らない可能性も含まれる。ならば、碑に附刻されるこの両名はどのような存在であるのか。 [2、欧陽詢書法を刻出する刻法の位置]伝世する欧陽通のもうひとつの作である泉男生墓誌にも、主な刻法が三類に分類できる九種が混在するが、その九種には道因法師碑の刻法と一致するものがない。しかし、その一部に類を同じくする刻法がある。その一類は欧陽通書法を反映した標準である可能性が高く、かりにその可能性を認めるならば、それ以外の(欧陽詢書法を刻出するなどの)異質の刻法の存在は何を意味するのか。[3、鐫刻の分業方法]道因法師碑のとくに広範囲を担当した刻法三者の分布状態は、おおよそ上・中・下の三段に分かれるが、その状態は巨碑の鐫刻において何を意味するか。
  単著   書論   書論研究会   41,166-178頁   2015/08


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.