タカサワ シュウイチ
  髙沢 修一   経営学部 経営学科   教授
■ 標題
  事業承継における非上場株式の評価に関する問題点 ~純資産価額方式の改正点を中心として~
■ 概要
  本稿では、非上場株式評価の純資産価額方式における最近の税制改正内容を中心として、非上場会社の事業承継に影響を与える、①営業権の評価を巡る問題点、②法人税額等相当額の控除を巡る問題点、③負債性引当金を巡る問題点について、税務会計上、特に財産税務会計の視点から考察を試みた。第一に、平成20(2008)年度税制改正によって営業権の評価額が大幅に減少し納税者有利に改正されたことに伴い①の問題点は改善されている。第二に、平成22(2010)年度税制改正において法人税額等相当額を算定する際に評価差額に乗じる割合が42%から45%に改正されたが、法人税額等相当額の控除が容認された場合と容認されなかった場合とで、非上場株式の評価に大きな差異が生じるため、法人税額等相当額の控除の是非については見解がわかれる。例えば、東京高裁平成15年3月25日判決は、純資産価額の算定にあたって法人税額等相当額を控除することは、課税の公平性の見地から容認できないとする。しかし、わが国の非上場会社の事業承継の現状を鑑みた場合には、法人税額等相当額を控除すべきであると提案したい。第三に、会計上、負債性引当金は、企業会計原則注解18に規定されている。しかしながら、賞与引当金及び退職給与引当金等の負債性引当金は、引当金としてとらえるよりも、むしろ「未払金もしくは未払費用」としてとらえられるべき性格のものである。つまり、賞与引当金及び退職給与引当金を「未払金もしくは未払費用」として認識した場合には、一株当たりの純資産評価額の算定において、賞与引当金及び退職給与引当金等の負債性引当金を控除することの妥当性を見出すことができるのである。よって、近い将来発生する蓋然性の高い負債性引当金については、相続税の純資産価額方式で評価負債として認めることを提案したい。以上、本稿では、最近の税制改正における純資産価額方式の改正点を検証するとともに、非上場株式の評価に関する問題点について論究したのである。
  単著   會計   森山書店   第180巻(第6号),総頁14頁頁   2011/12


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