フクシマ ヒトシ
  福島 斉   スポーツ・健康科学部 スポーツ科学科   教授
■ 標題
  高齢者大腿骨近位部骨折の転倒調査(内因性と外因性に注目して)
■ 概要
  高齢社会では転倒をきっかけとした骨折が問題となる。2010(平成22)年国民生活基礎調査によれば、要支援・要介護者(約450万人)の原因の10.9%が転倒・骨折によるものであるとされている。特に大腿骨近位部骨折の増加により入院費や手術時の内固定材料費、家屋改造費をはじめとする介護保険の諸経費などが諸財政を圧迫し、同時に身体および精神機能の低下など高齢者の生活の質(QOL)にも大きな影響を及ぼしている。大腿骨近位部骨折は90%が転倒により発症するとされる2)ため転倒予防対策が重要である。そのためには転倒状況の正確な把握が必要となる 。しかし国内の多くの研究は診療録調査による後ろ向き研究であり記載情報が貧困である、記載法が標準化されていない、100症例以上を対象とした研究が少ないなどの問題がある。本研究の目的は同一検者が質問事項を統一して大腿骨近位部骨折患者から受傷時の転倒状況について聴き取り調査を行い、転倒の実態を把握した。まとめ、1. 高齢者の大腿骨近位部骨折306例に対して、転倒状況の詳細を把握する目的で同一検者による聴き取り調査を行った。2. 屋内転倒は高齢になるほど増加し、そのうち居間・台所・廊下など障害物の少ない場所での転倒が6割を占めた。3. 内的要因による転倒は高齢になるほど増加し、外的要因によるものと比較してADL能力も低くかつ歩行予後も劣っていた。4. 転倒予防対策としてバリアフリーなどの環境整備だけでなく運動療法の介入が必要である。
  佐藤和強、苅田達郎、伊賀徹、近藤泰二、岡﨑裕司
  共著   臨床雑誌 整形外科   南江堂   63(10),1021-1026頁   2012/09


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