カワチ トシハル
  河内 利治   文学部 書道学科   教授
■ 標題
  『黄道周研究』
■ 概要
  【序章より】
黄道周(一五八五年(明萬暦十三・乙酉)二月九日生〜一六四六年(明隆武二年・清順治三年)三月五日卒)は、明末の思想家・政治家・書家である。(中略)稿者はこれまで、清朝軍と戦って捕らえられ、処刑された黄道周に着目し、なぜそのような生き方を選んだのかを考えるため、彼の交友関係およびその応酬詩文と書画を中心に、政治家としての側面、学者としての側面、思想家としての側面、芸術家(含む書法理論)としての側面等を個別に検討してきた。茲にこれらの検討を総括し、黄道周が書き遺した詩文書画と、交友関係を築いた人々の詩文書画との表現営為を通じて、黄道周を中心とする明末の文人交友の実体を立証すること、それが本書の真正の目的である。清初には、詩文書画は文人の余技であると考える伝統派文人(遺民の傅山や顧炎武はその代表)と、職業として独自の価値を持つ芸術だと考える新興書画家(揚州八怪の鄭板橋や金農はその代表)が並存した。黄道周は明末の伝統派文人の代表者であると同時に、清初の伝統派文人にも支持され、多大な影響を及ぼした。この点についても、黄道周の後世への影響という視点から考究すると、同時代以後に受容された多くの書跡が何よりの証左となる。それゆえ、黄道周を中心に見た明末の文人交友と詩文書画の表現営為を、交友の実体に則して総合的に研究する観点は、従前にはない明末清初期の文人論であり、文人研究の新たな方法論による展開であると考える。

  河内利治
  単著   汲古書院      2020/01


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