ワタナベ ヨシヒコ
  渡辺 良彦   外国語学部 英語学科   教授
■ 標題
  述詞関係節における関係詞の選択と属性帰属力について
■ 概要
  本稿では、英語の述詞関係節((1)のhe was)における関係詞の選択には、関係詞の関係節主語に対する属性帰属力の相対的相違が関与することを示した。
(1)He sounded like the clergyman he was. (彼は、まさしく聖職者らしい話しぶりであった)
「属性帰属」は、元来、叙述(predication)において述詞が主語に対してその属性を付与する機能のことである。本稿では述詞関係節に、先行詞と空所(述詞)を仲介する関係詞が先行詞述詞の「属性」を関係節主語に付与する(帰属させる)機能を認めた。さらに、関係詞の属性帰属力は関係詞が先行詞と関係節主語を結び付ける力の違いによって決まると考え、河野(2016)の河野仮説(概略、以下の(2))のいう関係詞の結合力の違いが関係詞の選択と同時にその属性帰属力を決定すると主張した。
(2) 最も先行詞に対する限定修飾力が強いのがゼロ形関係詞、逆に最も弱いのがwh形関係詞、thatは両者の中間である。
本稿の「属性帰属力」は、制限節の場合の先行詞に対する「限定修飾力」に関する「結合度」とは別の概念であり、前者を後者で置き換えることができない概念である。属性帰属力は、空所の述語のに関する意味を解釈する際に先行詞述詞が「どのような仕方で」参与するのか、その解釈様式の違い(これにより関係節の命題の独立性の違いが導出される)を導き出すために必要な概念である。本稿では、河野仮説が述詞関係節の分析にも当てはまることを属性帰属力の点から証明するために、属性帰属力に関する有力な証拠を提示した。結論として、述詞関係節の関係詞の相対的属性帰属力に関し、(3)の仮説を提示した。
(3) 述詞関係節の関係詞の相対的属性帰属力は、ゼロ形が最も強く、逆に最も弱いのがwhich(whoは不可)、thatが両者の中間である。

河野継代. 2016. 「関係詞の選択と限定修飾力」『英語語法文法研究』第23号, 86-101.

  渡辺良彦
  単著   英語語法文法研究   開拓社   (第30号),209-225頁   2023/12


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