ワタナベ ヨシヒコ
  渡辺 良彦   外国語学部 英語学科   教授
■ 標題
  時と場所の関係節におけるwh関係詞 when/whereと前置詞+whichの選択について
■ 概要
  本稿の目的は、多くの実例(以下では省略)に基づいて、時と場所の関係節におけるwh関係詞((1a)(2a))と前置詞+which((1b)(2b))の使い分けについての原理を明らかにすることである(eは関係節内の空所(gap)を表す)。(1)a.the day[when...e...] b.the day[on which...e...](2)a.the street[where...e...] b.the street[on which...e...]結論的に言うと、wh関係詞の場合は、関係節が先行詞の「属性」を定義する、つまり、関係節の内容は先行詞名詞の一般的特徴を描写し、同時にその名詞によって表される概念の適用範囲を限定する読みの場合には wh関係詞が選択され、一方、先行詞名詞が既に定義されて(以下、「既定的」と呼ぶ)、関係節は偶発的付随的事柄を述べるだけの場合には前置詞+whichが用いられる。前者の「属性の定義と概念の適用範囲の限定」という点については、(3)A baker is a[person who bakes bread].のような定義文に見られる関係節の働きと同様と考える。(3)の関係節は通常の制限関係節と異なり、先行詞のpersonを定義づけて、personによって表される概念の適用範囲を(全体で総称概念としての“baker”の意味になるように)限定しているので、関係節による定義がないとpersonだけではその指示対象が定まらないという特徴がある。したがって、(3)の関係節の空所は、制限関係節の場合のような個体を変域とする変項xとは解釈されない。なぜならば、person who bakes bread 全体は bakerのことを指すからである。一方、前置詞+which の場合の((1b)(2b))では、先行名詞は「既定的」であるので関係節がなくともそれ自体で指示物が定まっている。本稿では、(1a)(2a)の(限定詞を除いた)day when...やstreet where...全体も(3)同様にある纏まった一つの総称概念に対応することがデータから実証される。さらに、本稿では、「原理とパラメータのアプローチ」に基づいて、空所の性質の違いから、関係詞の選択を説明しようとしている。すなわち、空所に総称概念を表す要素(N’)が存在する場合はwh句関係詞が選択され、空所が個体(NP)を変域とする変項xと解釈される場合には前置詞+whichが選択されると主張した。〔レフェリー有〕
  渡辺良彦
  単著   『言語研究』   日本言語学会   (126),93-112頁   2004/12


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