スギモリ ヒロキ
  杉森 裕樹   スポーツ・健康科学部 看護学科   教授
■ 標題
  委員会報告 人間ドックにおける基本検査項目等のデルファイ法による社会経済的研究
■ 概要
  背景:人間ドックは,疾病の危険因子を管理することで,一次予防や二次予防に貢献していると考えられる.一方で,人間ドックを含む予防的な健診は,EBMの観点からエビデンスが十分とは言えない状況にある.目的:本研究は,人間ドックにおける検査項目の社会経済的な意義を,専門職集団の知見等を定量化するデルファイ法にて評価し,検査・指導等の適切な普及に資することを目的とする.方法:対象検査は,基本検査項目等を中心に70項目とした.最終的なデルファイ調査の回答者は,人間ドック健診専門医の資格を有する106名(従事年数;17.80±7.40年,内科一般;72.6%)とした.本研究は,2段階のデルファイ調査を含む6つのステップから構成した.評価指標は,米国予防医学タスクフォース(USPSTF)の手法に準じて「期待される効果」,「避けがたい被害」,「必要となる費用」,「検査実践の状況」の4つの個別評価と1つの総合評価とした.評価の定量化は,アンケート方式でデータを収集し,5つのランクをもとにスコア化を実施した.結果:評価指標間の相関分析の結果,個別評価の「期待される効果」と「避けがたい被害」および「検査実践の状況」や総合評価の間には,有意な相関関係が認められた(p<0.01).第二段階のデルファイ調査の結果,基本検査項目等のうち88.6%で,結果を改善する方向に意見が収斂した(p<0.05).意見が収斂した後の「期待される効果」で評価が最も高いのは,血圧測定の4.14±2.28(スコア)であった.また「必要となる費用」の評価は,BMIで-2.51±2.28(スコア)と最も良かった.なお多くの基本検査項目等は,費用効果的となり,特にBMIや血圧測定のパフォーマンスが高かった.一方,意見が収斂した後の総合評価は,血圧測定が1.41±0.31(スコア)と最上位に位置付けられ,次いでHbA1cが1.35±0.35(スコア)となった.結論:本研究の結果,基本検査項目等は,医学的効果が期待され健康関連の被害も少なく,関わる検査費用や検査の普及状況も良好であった.また"費用対効果"分析でも,大多数の項目は費用効果的であった.基本検査項目等は,すべての項目で一様ではなく,人間ドック健診の目的に応じて,重みに差違があることが示唆された.
  田倉智之, 杉森裕樹, 佐藤敏彦、中山健夫、高谷典秀、渡邊清明、山門 實( 学術委員会 基準検査検討小委員会)
  共著   29(1),52-64頁   2014/06


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