オオハシ ヨシハル
  大橋 由治   文学部 中国文学科   教授
■ 標題
  『新説新語』と魏晋文化 -説話に見る人物評価の実相-
■ 概要
  『世説新語』は南朝宋の劉義慶が監修した志人小説集である。書中では主に後漢から東晋にいたる間の士族であり文人でもある人々の言行に関わる軼事を記している。内容は概ね漢魏以後の筆記小説と諸子、史伝中の物語的要素のあるものから採集しており、各方面にわたって当時の気風や習俗を反映している。よって多分野の参考に値する内容を有している。本論考では『世説新語』を資料として漢から魏晋にかけて人物評価がどのように行われていたのか、内容がどのように変化していったのかについて確認することを目的としている。その結果以下のことが確認できた。もと人材登用制度のために始められた人物評価であったが、評価の主体を有力者に壟断されてからはその社会的意義は薄れていった。この変化は、人々に人物評価の見方を実用的、功利的なものから、人物の個性、知恵、才能に対する批評へと転じさせたのである。これによって魏晋時代の人物品藻は功利を超えた審美的色彩を帯びるようになるのである。これにともなって評価の基準も道徳的なものから審美的なものへと移り変わっていった。このように『世説新語』には思想書や歴史書からだけではうかがい知ることの出来ない魏晋文化の実相が描かれていることを示した。 p1~20
  単著   『大東文化大学漢学会誌』第45号      2006/03


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