ナイトウ ジロウ
  内藤 二郎   経済学部 社会経済学科   教授
■ 標題
  「中国の市場化過程における政府間財政関係の研究-分権化の実態と対応-」
■ 概要
  改革・開放以降の中国の政治経済体制改革における政府間財政関係を、分権化の視点から明らかにしようとしたものである。本論で扱った財政問題は、多分に政治的要素を含んでいる。特に社会主義国である中国では、財政問題は経済的要因よりもむしろ政治的要因と大きく関わっているといっても過言ではない。そこで、政治経済体制改革という壮大かつ極めて複雑な枠組みの中で財政の分権化問題を議論し、現状の問題点と改革の視座を提示した。中国の実態は「分権化」が進んでいるというよりも、むしろ制度に基づかない「分散化」傾向を強めており、省レベル政府を中心とした「地方集権化」とも呼べる状況にある。こうした状況下で94年に開始された分税制改革では、地方の既得権を温存する性格が強く、格差是正の役割を果たしているとは言えない。しかしながら、地方主義の拡大が進むと、中央の政策変更による統制力が依然として機能していることも事実であり、そのなかで中央政府と地方政府の鬩ぎあいが続いている。役割分担-権限の配置-責任の明確化を前提とした明確な制度の確立が急務である。また、予算外資金などに代表される不透明な制度を改善し、規範化されたシステムの運営が不可欠となる。こうした課題の克服には、短期的には強い中央政府が必要であることから集権化の方向に向かわざるを得ないであろう。しかし中、長期的には地方の自立を目指した分権化の方向に向かうことが必要となってくると考える。
  単著   博士学位論文 神戸商科大学      2001/11


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