クラナカ シノブ
  藏中 しのぶ   外国語学部 日本語学科   教授
■ 標題
  和光同塵・上代高僧伝の思想-『日本霊異記』行基物語化の背景-
■ 概要
  PP.73-86 レフェリー有 『老子道徳経』に典拠をもちながら、わが国においてはむしろ『摩訶止観』に依拠する中世の神仏習合説に頻出する《和光同塵》について、上代に溯って用例を考証、受容の二経路を想定した。第一に『維摩経』教学研究における<大乗の菩薩の利他行>、第二に『梁高僧伝』「神異」伝論にみえる<神異霊験の高僧像>である。後者はさらに、高僧のおこなう神異霊験を「事」と位置づけ、これを衆生済度の機縁をなす菩薩行として把えている。この思想は『梁高僧伝』を介して、わが国初期僧伝に摂取され、『続日本紀』に「菩薩」、『霊異記』に「化身(隠身)の聖」と称された行基の物語化を支える思想的基盤を形成し、中世の《和光同塵》を準備する役割を果たしたことを論証した。 一、はじめに 二、『続日本紀』における行基と《和光同塵》 三、《和光同塵》と菩薩の思想 四、和光同塵・大乗の菩薩の利他行 五、和光同塵・神異霊験の高僧像 六、《和光同塵》は結縁の始 七、むすび
  単著   『上代文学』第66号(上代文学会)      1991/04


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