ユウキ ヨシノブ
  湯城 吉信   文学部 歴史文化学科   教授
■ 標題
  『滑稽叢話』に見る辛亥革命前後の中国
■ 概要
  大阪大学懐徳堂文庫には、いわゆる懐徳堂関係資料以外に、明治、大正期に収集された書物が多く所蔵されている。それらの中には、中国の同時代資料も見える。これらの資料も、懐徳堂文庫の魅力の一つである。本稿では、その一例として『滑稽叢話』という書物を紹介した。『滑稽叢話』は辛亥革命の年(一九一一年)に上海で出版された小咄集である。いわゆる通俗的な本なので、調査したところ大学図書館などでは普通所蔵されていない。ただ、通俗的である故に当時の社会情勢を如実に反映している。本稿では、官吏の腐敗、アヘンの悲劇、台湾割譲、留学生の様子、保皇党と革命党、未来の予測、辮髪、学制改革に関する記述を紹介した。変革を余儀なくされる中、人々がその変化に対応しきれなかった様子も窺える。また、通俗的とは言っても作者は文人であり、新しい事物を描写する際にも中国古典に束縛されているあたり、中国の文人の性を見ることができる。『滑稽叢話』は、当時の社会の様子を知る上でも、中国文化の特質を知る上でも、貴重な資料であると言える。
  湯城 吉信
  単著   懐徳   懐徳堂記念会   (85),60-71頁   2017/01


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.