ムトウ シンイチ
  武藤 慎一   文学部 歴史文化学科   教授
■ 標題
  前近代トルコ・キリスト教思想 ―ハラホト出土シリア文字テュルク語文書を中心として
■ 概要
  前近代において、すでにトルコ(テュルク)語を話す人々のキリスト教が存在していた。一千年期に活躍したソグド系の人々が歴史の表舞台から消えていってからも、彼らが伝えたキリスト教は東アジアから消え去らず、主にテュルク系の人々によって、少なくとも元代の十四世紀まではその命脈を保っていた。しかし、資料上の制約が大きかったため、先行研究ではテュルク・キリスト教思想の特徴までは、殆んど把握されるに至らなかった。それに対して、われわれプロジェクトチームが初めて公にした、ハラホト新出土文書は最大の分量を有する。
 本研究では、まずこのシリア文字テュルク語文書の内容を分析した結果、施しの義務、献げものと報酬、終末的報酬としての救済、宗教儀礼と恐れ、の4つの部分からなる。次に、使用されている外来語の由来からその系譜、言語文化的背景を明らかにした。本研究が初めて明らかにした独自のキリスト教思想だけでも、元代の神学的著作はない、としてきた従来のテュルク・キリスト教観の書き換えを迫るものである。

  単著   基督教学研究   (39),1-40頁   2020/03


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