ムトウ シンイチ
  武藤 慎一   文学部 歴史文化学科   教授
■ 標題
  The Term "Three-One" (Trinity) in Jingjiao in Comparison with That in the Taoist Religion
■ 概要
  三一論は、もちろんキリスト教と非キリスト教を分ける、古代以来の根本的な教義だが、この用語「三一」自体は近代日本の翻訳語ではなく、古代中国にすでに存在していた。これは基本的な数詞の組み合わせなので、それぞれは様々な使われ方がされてきたが、特に「一」は宇宙の根本原理を象徴し、「三」は「四」以上、即ち万物を象徴する。「三一」は、道教にとっても重要な用語の1つである。したがって、781年に唐の長安に建立された「大秦景教流行中国碑」で、キリスト教の神が「三一」と漢訳された時、東西の2つの宗教が出会っていたのである。
 本研究では、この2つの宗教の「三一」の用法の共通点と相違点を文献学的、歴史的、哲学的観点から扱った。道教側の三一論としては、漢末から六朝時代にかけての宇宙論的三一論、六朝時代から隋代にかけての適応的三一論、そして唐代に高度に発展した思弁的三一論の3種類に分類することができる。これと景教側の三一論を比較した結果、景教側は取捨選択を行い、適応思想は道教側と共有しつつも、衒学的なきらいがある思弁的三一論は斥けたことが明らかになった。

  Li Tang/Dietmar W. Winkler (ed.)
  単著   Artifact, Text, Context: Studies on Syriac Christianity in China and Central Asia   Wien: Lit Verlag   95-112頁   2020


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