ムトウ シンイチ
  武藤 慎一   文学部 歴史文化学科   教授
■ 標題
  ヘブライ性、ユダヤ性、アラム性、キリスト教性
■ 概要
  巻頭言。「キリスト教=ヘブライズム+ヘレニズム?」、つまりギリシア精神なしのキリスト教はあり得ないのか、という根本問題がある。より私の専門のシリア学、教父学、解釈学に引きつけてこれを表現すると、「キリスト教のギリシア化」(ハルナック)は長らく問題になってきたが、同様に「キリスト教のアラム化」も問題になって然るべきである。これらは一方向的な現象では決してないので、同様にキリスト教の「脱ギリシア化」や「脱アラム化」、さらには「再ギリシア化」や「再アラム化」なども考察しなければならない。それには、ある程度の長さのスパンを伴った研究対象が必要となる。ここに、教父学、古代キリスト教研究の意義がある。
 特に、シリア・キリスト教は共時的には西洋のギリシア・ラテン語圏のキリスト教と中東のアラム・アラビア語圏のユダヤ教、イスラム教の三者を結ぶ要であり、通時的には同じセム語のヘブライ語、アッシリア語圏を始めとする古代オリエント世界とアラビア語圏の中世イスラム世界とを結ぶ接点である。従来考えられていたよりは、アラム(シリア)・キリスト教とアラム・ユダヤ教の共通点が大きいだろう。

  単著   京都ユダヤ思想   (7),1-6頁   2016/06


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