オオスギ ユカ
  大杉 由香   スポーツ・健康科学部 スポーツ科学科   教授
■ 標題
  「日本建築協会の視点から見た戦前の衛生問題-何故問題は意識されつつも抜本的改善につながらなかったのか-」
■ 概要
  戦前日本の衛生問題に関する研究は、衛生問題の専門家と一般国民の感覚にはある程度触れているものの、その中間的な部分、すなわち衛生問題の周辺領域の専門家たちの視点に関する記述は殆ど見られなかった。そこで本稿では日本建築協会の雑誌に焦点を当て衛生問題を考えたがそれはある意味で研究の空隙を埋める意味を含んでいる。さらに本稿では衛生問題が戦前から現在に至るまでパンデミックでも起きない限り、日頃はその重要性が忘れられがちであることを指摘し、さらに人権意識が希薄で人を物資同様に国のために投入可能なものとみなす戦前では、目先の軍拡が重視され衛生環境は等閑にされたことも明らかにした。つまり現在の衛生的な環境は人権擁護の意識ができてこそ成り立つことを述べたが、同時に1920年代に『建築と社会』(日本建築協会の雑誌)の一部の論文で格差縮小のために唱えられた住居権(誰もが快適で清潔な家に住む権利という発想)が未だに現代日本でも確立していない問題も洗い出した次第である(共著者:土井幸平)。
  共著   大東文化大学経済研究所『経済研究』   大東文化大学経済研究所   (第22号),p.1-p.10頁   2009/03


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