モリ トシキ
  森 稔樹   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  「連邦行政手続法改正後における行政行為の撤回」
■ 概要
  〔佐藤英善・首藤重幸編『行政法と租税法の課題展望 新井隆一先生古稀記念』(2000年、成文堂)227~297頁〕日本の行政法学において、行政行為の撤回は、未だに根本的に理論的解決がなされているとは言えない領域の一つである。ドイツの連邦行政手続法には、行政行為の撤回に関する一般的な規定が置かれているが、これによって理論的な解決がなされた訳ではない。1996年5月、連邦行政手続法、連邦予算法、社会法典10巻などにおける、行政行為の撤回および職権取消の規定を改正する「行政手続法的諸規定を改正するための法律」が施行された。本論文は、このうち、連邦行政手続法第49条および第49a条に着目し、変更点と行政法総論への影響などを考察するものである。連邦行政手続法49条は、削除された連邦予算法第44a条を引き継ぐ形で改正された。そして、第49a条は、適法な行政行為が撤回されたことによる給付の返還を定める。日本の行政法学において、撤回は、(職権)取消と異なり、遡及効を持たないこととされている。ドイツにおいても基本的には同様である。しかし、連邦行政手続法の改正により、金銭給付や物品給付に関する行政行為について、撤回に遡及効が認められることとなった(第49条新第3項)。その点で、遡及効の有無というメルクマールの意味は減じられている。ただ、給付の具体的意味については、問題が残る。第49条新第3項の適用範囲については、ドイツの学説において議論がある。端的に言えば、助成金(連邦予算法第23条および第44条)に限定されるか否かということである。また、新第3項と第2項とで適用範囲が重なる可能性もあり、問題を残す。また、第49条新第3項に関連する問題として、成立当初に適法であったが事後に違法になった行政行為について48条と第49条のいずれが適用されるのかという問題がある。本論文では、第48条説を採るWolf-Rudiger Schenkeの説を概観し、第49条説との比較検討上、第49条新第3項によってSchenkeの見解が妥当性を失ったと結論づける。
  共著   成文堂      2000/03


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