モリ トシキ
  森 稔樹   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  「地方目的税の法的課題」
■ 概要
  地方税法に規定される目的税(地方目的税)は、地方分権改革との関連においてにわかに注目を浴びたが、性質や正当性などで多くの問題を抱える。本論文は、地方目的税の一般的性質や存在意義、そして各税目の法的問題点を検討するものであり、今後のあり方や可能性についても考察を加えている。「地方税目的税の必要性と正当性」の項においては、地方目的税、あるいは、より一般的に目的税の性質や問題点を検討する。目的税は、予算にけおるノン・アフェクタシオンの原則に対する例外をなす。地方分権改革の進展とともに、目的税の負担と行政サービスとの関係の対応が注目され、受益者負担論の観点からの再評価が進んでいる。しかし、目的税のメルクマールは受益者負担論や応益課税論と直接関係しないところにある。そればかりか、目的税は、収入が少なければ存在あるいは存続の意義が問われかねず、逆に収入(の割合)が多くなれば、予算、さらに財政全般を硬直化させる。そのため、目的税は予算における資源配分を歪める危険性を有する。また、目的税の使途が限定されるため、地方公共団体の課税自主権、議会の予算審議権・議決権を狭める可能性が高く、結果として団体自治・住民自治の原則に背馳することになりかねない。「各税毎の課題」の項においては、都道府県目的税および市町村目的税とされる各税目毎に検討を進め、問題点について検討を進める。「法定外目的税の可能性」の項においては、地方分権改革との関連における意義および必要性、可能性を論じる。ここでは、とくに、地方税法第731条ないし第733条に規定される、国の同意を要する事前協議に着目し、地方公共団体の自主財源を拡充するための法定外目的税の導入には消極的な見解を述べる。逆に、特定の政策を遂行するための財政手段による規制を目的とする法廷外目的税の活用こそが、最大の可能性である旨も述べる。
  単著   日税研論集46号(2001年3月号)279~319頁      2001/03


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