モリ トシキ
  森 稔樹   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  「ドイツの電子申告制度における現状と課題」
■ 概要
  日本においても、国税庁の国税総合管理システムが稼働し、本格的な電子申告制度の運用が開始されることとなっている。電子申告制度は、先進各国で進められている電子政府・電子自治体構想の先頭を進む形で導入されている。租税法学界は、早くから電子申告制度に着目してきたが、ドイツの制度についてはあまり知られていなかった。本論文は、ドイツの電子申請制度に関する日本で最初の本格的な研究論文である。なお、本論文は、1999年12月24日、日本税理士会連合会に提出された日本税務研究センター『「電子申告制度について」に関する報告書』中の「ドイツの電子申告制度」を基に、その後の制度の発展状況などに応じて加筆したものである。本論文は、ドイツの賦課課税資料申告方式について簡単に述べ、電子申告制度を採用するための税務行政のコンピュータ化、そしてこれに対応する法律の整備を概観する。ドイツの場合、1980年代から、段階的に租税通則法(Abgabenordnung)の改正が行われた。これにより、1994年よりDATEV方式(DATEVは、税理士などから構成される協同組合組織)、さらに1999年からELSTER方式が運用され始めた。本論文では、とくに電子申告制度の導入に積極的であったバイエルン州の動向なども紹介している。そして、DATEV方式(専用回線を用いるもので、既に廃止されたようである)の概略、およびELSTER方式の概略について述べる。ELSTER方式は、バイエルン州のミュンヘン電子情報処理局が開発したもので、インターネット網を活用するもので、本論文発表後にはいっそうの発展をみている。いずれの制度についても、2000年秋の時点における各州での導入状況などを紹介している。最後に、電子申告制度の課題として、税理士業務への影響および行政法理論への影響について述べる。
  単著   税務弘報第49巻第1号(2001年1月号)   145~158頁頁   2001/01


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