モリ トシキ
  森 稔樹   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  地方消費税再考-地方税財政権の観点から-
■ 概要
  地方税法第72条の78以下に定められ、1997年4月1日より施行されている地方消費税は都道府県税であるが、譲渡割の納税申告・確定・徴収に関する事務については、附則第9条の4によって「当分の間」は国に委託する形がとられており、貨物割に至っては本則によって国が賦課徴収の事務を行うこととなっている。この点については施行以来批判があるが、論文はそれほど多くない。本論文は、地方税財政権の観点から地方消費税を検討し、地方消費税が地方税収入権、都道府県間の税収偏在性の是正に貢献してはいるものの、それに留まることを明らかにする。 また、1990年代以来、地方消費税を含めて日本の税制論議における主流として「応益原則」の強調があげられているが、この原則の意味するところは不明確であり、本来は区別すべき課税の根拠論と負担の根拠論を混同しているところに問題がある。本論文は、この点を批判した上で、応能負担原則と応益負担原則の両者について、課税の根拠論との結びつきを改めて検討し、安易な「応益原則」の強調による地方消費税の税率引き上げ論が税の逆進的構造を強めるのみならず、民主主義の原則にも抵触することを論証する。
  単著   税制研究55号(再刊15号。消費税20年特集号)   91~97頁頁   2009/02


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