コウノ ヨシツグ
  河野 良継   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  「契約当事者関係の誤謬における市場社会の法イデオロギー」
■ 概要
  本論文は、英国法におけるネグリジェンス責任の形成をめぐる議論の混乱とその原因を、法の内部と外部の双方から分析することを目的としている。19世紀初頭の英国において、市場経済の拡大に伴い、取引関係が複雑化・多様化し、他方で工業製品の生み出す潜在的なリスク予測が困難となった。その結果、製品欠陥や修理ミスによる第三者損害の事例や鉄道事故の事例等、従来の法の想定を超える事案が発生するようになった。このような問題に対して、19世紀前半の裁判官達は、契約を市場規律原理として解釈して、市場を前提とした自由な個人による自発的な取引という契約自由の理念を重視し、各個人は自らの意思で契約を取り交わして人間関係を構築するというイデオロギー的価値判断の下に、基本的には契約によってのみ義務が設定されるという立場から判断を下していたことを明らかにした。
  単著   『阪大法学』第四八巻第三号      1998/08


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