コウノ ヨシツグ
  河野 良継   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  「コンシュマーリズムの倫理と消費社会の精神?」
■ 概要
  本論文は、消費する個人の主体性が困難であると法的議論において認識されているにもかかわらず、何故前提とされ続けているのかという問題を、消費社会論の文脈で再定位することによって、解明することを目的としている。まず、消費者法学や消費者政策は、市民間に「本来は」格差がない状態というものを議論の出発点とする市民法/市民社会論を前提としている。そして、本来は格差はないのだが、現実には格差が生じているので法的に介入する、という基本構造がある。この議論の前提となっている市民社会は、個人主義を倫理的基盤としている。一方で、今日の消費社会は、消費者を眩惑することで欲望を喚起していると考えられている。そして、消費は、人間個人の唯一性を追求するために記号的差異を欲求し続けなければならないという「呪われた」自由の行使となってしまっている。したがって、法的には自由な自己決定の主体であるが、社会的には、個人の自由意思を行使しなければならないことが前提とされていることになる。よって、自由意想の主体という表徴の下に、全く懸け離れている二つのイメージが潜在しており、法的議論はこの二重性に暗黙のうちに依拠しているのである、ということを明らかにしました。
  単著   『阪大法学』第五四巻第一号 119~163頁      2004/05


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