コウノ ヨシツグ
  河野 良継   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  「責任意識の制度化と近代化についての一考察(下)」
■ 概要
  本論文は、客観的過失に責任を課すという法意識がいかなる時代背景のもとで成立し、なおかつ近代社会の普遍的原理として受け入れられ、制度化されてきたのかを考察する論文の後半部分である。本論文は、全体のうち、第3章、第4章と結語部分からなっている。産業革命の到来による社会関係の枠組変容により、市場の理念が法の領域にも浸透することようになると、契約当事者の意思を最大限尊重する法解釈が登場した。更に、商品生産と交換の普遍化により、個人が相互に独立かつ同等な人格たる法主体として、抽象的な存在として扱われるようになった。その後、19世紀英国の法学において合理人の想定が登場した。この合理人の想定とは、個人が想像する他者の態度(評価)が組織化されたものであり、一般的他者の評価が各人に内在化されることで、それが常識的知識として間主観的に構築され、信頼を生み出すことになる。ひとたび裁判官が合理人基準を法であると宣言すると、この基準が社会規律原理となって、人々の通常の認識にも介在するようになった。本論文では以上のことを検討した。
  単著   『阪大法学』第五〇巻第六号      2001/03


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