コウノ ヨシツグ
  河野 良継   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  「責任意識の制度化と近代化についての一考察(上)」
■ 概要
  本論文は、客観的過失に責任を課すという法意識がいかなる時代背景のもとで成立し、なおかつ近代社会の普遍的原理として受け入れられ、制度化されてきたのかを考察する論文の前半部分である。本論文は、全体のうち、序文と第1章、第2章からなっている。本論文では、主に、近代以前の英国の法制度を概観しつつ、なぜ近代以前の法制度の下では、客観的過失責任が成立しなかったのかということについて考察している。近代以前の英国法の基本構造は原則的に訴訟方式に基づいていたが、権利侵害の主張は訴訟方式の区分に従って申し立てられる/判断されることとなったため、普遍的かつ統一的な責任観念は存在していなかったし、法的議論の重要な関心事ではなかった。また、19世紀以前の段階においては、特定の条件下においてのみ成立する厳格かつ高度な注意義務と、当事者同士の関係に依存的な相対的注意義務の両者が並立していたため、義務の観念は両者の錯綜に因われたままであった。本論文では、以上のことを検討した。
  単著   『阪大法学』第五〇巻第四号      2000/11


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