サトウ キリコ
  佐藤 桐子   外国語学部 英語学科   教授
■ 標題
  The Choice of Relative Pronouns in the First Quarto and First Folio Texts of Shakespeare's Richard III: Testing the Memorial Reconstruction Hypothesis
■ 概要
  シェイクスピアの『リチャード三世』は、第一・二つ折本と第一・四つ折本に納められており、この二つの版には、内容や言語に関して数多くの異同があることが知られている。Patrick (1936) は、第一・二つ折本の読みは優れており、シェイクスピアが書いた痕跡が残されていると考えられるが、第一・四つ折本には誤りが多く、この劇を演じた役者たちが、不正確な記憶に基づいて作成したのではないかという仮説を立てた。一方、Smidt (1964, 1970) は、第一・四つ折本のほうにも優れた読みが認められるとして、第一・四つ折本は、役者が書いたものにシェイクスピア本人が修正を行ったものではないかと論じている。本研究は、関係詞の異同に着目した結果、それぞれの版の関係詞の選択に特徴が認められることを明らかにした。すなわち、第一・二つ折本のthatのうち13例は、第一・四つ折本ではwhichに置き換えられているが、第一・二つ折本のwhichが第一・四つ折本でthatに置き換えられることは一度もない。関係詞のような機能語の選択に一貫した傾向があることは、Patrickの仮説では説明することは出来ない。そこで、13例のthat/whichについて、関係詞の機能や、先行詞等を分析した結果、第一・四つ折本のほうがシェイクスピアの通常の関係代名詞の用法に近いことが分かった。また、その13例以外にも、第一・四つ折本にシェイクスピアの関係詞の特徴が認められた。こうした事実から、Smidtが主張するように、シェイクスピアが第一・四つ折本の言語に修正を行った可能性があると結論付けた。
  単著   Anglica: An International Journal of English Studies   University of Warsaw   28(2),63-77頁   2019/09


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