サトウ キリコ
  佐藤 桐子   外国語学部 英語学科   教授
■ 標題
  The Relative Which with Personal Antecedents in Shakespeare's History Plays
■ 概要
  Sato (2016)は、シェイクスピア劇全37作品を調査し、人を先行詞とするwhichは、話者が自分よりも目下の者へ使う、あるいは怒りなどの感情で興奮したときに使うことを明らかにし、二人称代名詞thouに似た語用論的特徴を示すと論じた。本論文では、この問題について、シェイクスピアの歴史劇10作品に調査を広げた。
 シェイクスピアの歴史劇には、whichが人を先行詞とする例が39例ある。そのうち14例が、国王など身分の高い話者の台詞の中で、目下の者に対して使われる。一方、他の14例は、口論や相手を罵倒する台詞の中で、身分格差とは関係なく使われる。そして、どちらにも当てはまらない11例のうち10例は、先行詞が死者や遺体を指す文脈で使われている。興味深いことに、Barber (1981)は、シェイクスピアは、話者が遺体や死者に呼びかける時に、身分格差とは関係なくthouを使うことがあると指摘している。したがって、39例のwhichのうち38例が、thouが使われる三つの状況のいずれかにおいて用いられている。
 初期近代英語期には、whichの使用は徐々に物を表す先行詞に限定されるようになり、人に使うことは避けるべきだと考えられるようになった。シェイクスピアは、そうしたwhichの特徴を認識し、特定の文脈でのみ使っていたとするSato (2016)の主張を確かめることが出来た。

  単著   Neophilologus: An International Journal of Modern and Medieval Language and Literature   Springer   103(2),273-291頁   2019/04


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