サトウ キリコ
  佐藤 桐子   外国語学部 英語学科   教授
■ 標題
  The Personal Use of Relative which in Shakespearean English: The Relevance of Social and Emotional Factors
■ 概要
  本論文では、シェイクスピア劇における人を先行詞とする関係代名詞whichの特徴を明らかにする目的で、who及びwhom(以下who(m))との比較を行った。まず、シェイクスピア劇全37作品において、先行詞が二人称代名詞のthouまたはyouである場合、which/who(m)の分布に明らかな相違があることを指摘した。すなわち、先行詞がthouの場合は、whichが9回、who(m)が17回使われるが、先行詞がyouの場合は、who(m)が17回に対し、whichは1回しか使われていない。語用論的研究によれば、シェイクスピアは、話者が目下の者へ呼びかける、あるいは話者が感情的に話す場面ではthouを使うが、そのような状況以外ではyouを使うことが知られている。先行詞you/thouに続くwhich/who(m)の分布状況から、whichとthouは語用論的に似ているのではないかと考えられる。そこで、『ロミオとジュリエット』、『リチャード二世』、『リア王』において、who(m)/whichが使われる場面を調べた結果、①whichは、knaveなど人を罵る言葉を先行詞として取ることが多く、怒りなどで興奮した話者が使う傾向があること、②whichの先行詞が指す人物は、通常、話者よりも身分が低いこと、の二点が明らかになった。一方、who(m)にはそのような特徴は認められなかった。シェイクスピアの英語では、who(m)は無標(unmarked)であるのに対し、whichは、特定の場面に限られ、有標(marked)であると結論付けた。
  単著   Anglia: Journal of English Philology   De Gruyter   134(2),207-238頁   2016/06


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.