A.R. ウルック
  A.R. ウルック   国際関係学部 国際文化学科   准教授
■ 標題
  「プロジェクト絵馬」再訪:中英協定校大学大連キャンパスで藝術・デザイン専攻中国人学生とともに希望を探求する手段として絵馬を活用する
■ 概要
  「プロジェクト絵馬」は、筆者が2013年から2016年にかけて主催した世界規模のマインドフルネス・プロジェクトであり、ベルファストのクイーンズ大学(QUB) 教育学大学院博士論文研究の中心をなすものである。絵馬(奉納祈願板絵)は、日本の神道信仰体系で用いられる文化的工藝品なのだが、本研究ではその本来の用法を再解釈して用いている。本プロジェクトは、応用視覚藝術調査法 (AVE)の理論に基づく学術的実践であり、「日本の絵馬」は南ベルファストの忘れられたプロテスタント共同体の人々と希望の理念を結びつける手段となった。人々の希望はマークメイキングの手法で直接絵馬板の上にしる(記・印)され、絵馬は地域共同体の公共の場で掲示されて、事実上まさに「社会的連帯の藝術」Socially-Engaged Art (SEA:単なる表面的なCommunity Artではなく、共同体を結び、関係を築き、内部から変革するという意味を含む) と呼べるものになった。すなわち「プロジェクト絵馬」は、応用視覚藝術調査法 (AVE)の原理に依拠し、視覚的方法や視覚藝術作品を二次的な目的に用いる可能性を模索した研究と言える。つまり、生み出されたマークメイキングや視覚的産出物など作品そのものは研究の中心的焦点ではなく、むしろそれらの作品を超えて、それらの作品が指し示す何か別のものが中心になっている。本稿の主題である中国における「プロジェクト絵馬」再現は、2017年から2018年の冬、英国サウサンプトン大学 (UoS)と協定校関係にあった中国大連工業大学(DPU)において(当時筆者は両大学の共同プログラム在大連副所長)、グラフィックアートおよびファッションデザイン専攻1年生の学期末活動として、学生が日本文化に触れるとともに、自分自身の将来の希望や願望について考えるための手段として実施された。この2回目の「プロジェクト絵馬」では、ワークショップの実施形態をベルファストでのやり方から少し変更した。その理由は、日中関係の現状を踏まえて、若い中国人学生たちがどのようにこのプロジェクトに取り組むだろうかということを明らかにし、またさらに、ワークショップ実施形態(授業形態)を大学におけるアート&デザイン教育の水準にできる限り近づけたいと筆者が強く望んだためである。
  A.R.ウルック
  単著   大東文化大学紀要(人文科学)   62,391-410頁   2024/03


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