ナカムラ セイジ
  中村 清二   文学部 教育学科   准教授
■ 標題
  総合学習の「総合性」の原理的問題:城丸章夫の「学習の総合化」論をてがかりに
■ 概要
  戦後教育方法史の概説書によれば、「総合学習」とは、教育課程改革によって時々の学校教育問題に教科の枠にとらわれずに対処しようとする取り組みの総称であり、戦後、広がりを見せ、1970年代の「総合学習論争」では城丸章夫から原理的批判があったものの、1998年の「総合的な学習の時間」の創設を機に全国化し、2000年代に入ると教育課程行政が「総合性」概念を根拠とする立場に立つに至った、と総括される。しかし、この総括は、城丸の原理的批判に応えることなく「総合性」を所与とし、その妥当性に疑問を残す。そこで城丸の批判の内実である「学習の総合化」論を手掛かりに、「総合性」を検討すると、その妥当性は認められなかった。ただし、先行研究における「学習の総合化」論の理解にも「行動」や「知識の訓育的意義」の見落としがあった。そこで城丸の議論を検討し、二つの「学習の総合化」があり、教科と教科外に関係付けられていること。また、教科で知識を「見方・考え方」として教えることに徹する構想であることを確認する。70年代の総合学習論争の城丸の批判は、「行動」をベースとした教育課程編成論および教科で「見方・考え方」を探求的に教える授業論の提案として、総括されてよい。「総合的な学習の時間」は、廃止論を別とすれば、「見方・考え方」を教える教科の授業との密接な連関の中で構想する場合のみ、意義ある理論と実践の展開となる。
  単著   『教育方法学研究』   日本教育方法学会   48,85-95頁   2023/03


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