タカハシ ムツミ
  高橋 睦美   文学部 中国文学科   講師
■ 標題
  唐玄宗『道徳真経』御疏の思想的特徴―「唐玄宗御製道徳真経疏釈題」を手がかりに―
■ 概要
  先に発表した⑤の成果を踏まえ、御注・御疏が「妙本」、「道」、「沖用」・「沖気」という一連の「道」の構造を必要とした理由を考察したのが本稿である。本来ならば御注・御疏両書を検討対象とすべきであるが、上記の「道」の構造が御注と御疏とで共通しており、本稿の御疏についての検討結果が御注の理解としても適応可能であろうと考えられること、また、本稿で検討の軸とした「唐玄宗御製道徳真経疏釈題」という文章が御疏に付された文章であることから、ここでは御疏のみを取り扱った。
 検討の結果、御疏は『老子』を「理国理身」の思想であるとの立場から解釈しており、君主の「理身」が百姓をして「理身」させ、それが「理国」へつながると考える。そして、「理身」の文脈においては、「妙本」とは立ち返るべき人間の本性、「沖用」は本性に立ちかえるための具体的実践を述べる語としても用いられていることが明らかになった。これこそが「妙本」と「沖用」が「道」の体と用として設定されていた理由であり、『老子』を「道」による修身治国の書として解釈したのが御疏であった、そして御注もその点では同様であったというのが本稿の結論である。

  単著   『集刊東洋学』   中国文史哲研究会   (115),25-44頁   2016/06


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.