タカハシ ムツミ
  高橋 睦美   文学部 中国文学科   講師
■ 標題
  研究ノート・『老子指帰』思想再考―後漢期の生成論との比較から―
■ 概要
  『老子指帰』は先行研究にいうように六朝玄学との近似性を有するというよりも、むしろいくつかの点で大きな相違点を有するということ、前漢はじめの書である『淮南子』とも思想的関連性があるということを指摘した。その成果を踏まえ、後漢期の張衡『霊憲』、『易緯乾鑿度』に見える生成論の構造を分析し、先行研究において『老子指帰』に特徴的であり、六朝本体論に類するとされてきた生成論の枠組みが、実は後漢生成論の思想との間に共通点を有するものであったということについて論じたのが本稿である。その際注目したのは『老子指帰』および後漢の書物に見える「無」の窮極性を述べる際の論理である。そこに共通するのは「無」に段階を設け、その段階を遡っていくことでより窮極的な「無」を措定しようとする態度である。この点で『老子指帰』は後漢的な思想との間に共通点を有すると考えられ、そしてその思想は六朝の本体論的思想とは一線を画するものであったという結論を得た。
  単著   『集刊東洋学』   中国文史哲研究会   (104),102-114頁   2010/10


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