タカハシ ムツミ
  高橋 睦美   文学部 中国文学科   講師
■ 標題
  『老子指帰』と王弼『老子』注における差異
■ 概要
  『老子指帰』には『周易』に基づくと思われる文章が随所に見られることから、先行研究においては『老子』と『周易』を思想的に融合させている点で、六朝の先駆的なものであると評価された。しかし、先行研究では『老子指帰』中の『周易』に関係すると思われる文章を抜き出したのみで、『老子』の思想と『周易』の思想をいかにして結びつけているのかという点に関しては言及していなかった。そこで、『老子』・『周易』双方に注を施した王弼の注釈方法と比較することを通して、『老子指帰』における『周易』受容がいかなる特徴を有するのかということについて検討を行ったのが本稿である。検討の結果、王弼の『老子注』と『老子指帰』は、いずれも『老子』解釈の重要な部分で『周易』の論理を結合させているという点では同様であるが、しかし『老子』のある文章の解釈について『周易』のどの部分を関連づけるかということについては相異があることが看取された。そして、従来の『老子指帰』六朝玄学先駆説に対する反論として附言すれば、王弼に特徴的な言語を媒介とした認識論的思想の視点が『老子指帰』には見られないという点も重要であると考えられる。
  単著   『日本中国学会報』   日本中国学会   (61),29-43頁   2009/10


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.