タカハシ ムツミ
  高橋 睦美   文学部 中国文学科   講師
■ 標題
  『老子指帰』の思想的位置―『淮南子』との比較を手掛かりに―
■ 概要
  先に発表した論説①の成果を踏まえ展開したのが本稿である。前稿において、『老子指帰』の思想は従来先行研究では六朝本体論との近似性を指摘されてきたが、文中に用いられる概念およびその相互の関係性を再検討してみると、近似性よりもむしろ両者の相異について注意を向けるべきではないかという結論に至った。そこで今度は『老子指帰』以前の道家思想的文献との比較から、該書が思想的に占める位置について検討を行うこととした。 
そこで注目したのが前漢はじめの書物である『淮南子』である。本論の検討によれば、『老子指帰』は『淮南子』の思想を承けつつも、そこに見える思想的な要素を『老子』第42章を骨格とした生成論に組み込むことによって統合し、発展させたものであることが明らかになった。また、『老子指帰』には『周易』に基づくと思われる文章が散見する点について、『淮南子』の『周易』引用態度との違いについても考察を行った。この部分の検討では、『淮南子』の『周易』引用がいわば断章取義の域を出ないものであるのに対し、『老子指帰』は『周易』の論理を自らの思想構造注に組み込み、その際に両者の概念が矛盾をきたさないような調整が行われている点で異なっていることを指摘した。

  単著   『文化』   71(3・4―秋・冬―),177-197頁   2008/03


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.