タカハシ ムツミ
  高橋 睦美   文学部 中国文学科   講師
■ 標題
  『老子指帰』の思想について
■ 概要
  『老子指帰』は、前漢末厳遵の作と伝えられる書物であるが、『四庫提要』が偽書と断じて以降、偽書説が大きな影響力を持つこととなった。このことにより該書はながく充分な思想的研究がなされてこなかったが、現代の学者により『提要』の偽書説の問題点が指摘されて以後は、真書説を唱える研究者も増え、その上でこの書物が六朝玄学の先駆的性格を有するという点が注目されるに至った。
本稿は、そのような現状をふまえた上で、『老子指帰』の思想内容について再検討を行った。まず改めて『老子指帰』中に用いられている諸概念の内容の明確化を行い、概念相互の関連性について検討を加え、それらの作業を通じて『老子指帰』全体の思想構造を体系的に理解することを試みた。またその際、『老子指帰』の思想の内、六朝本体論との類似が指摘されてきた生成論の構造を分析し、先行研究の再検討を行ったが、それは六朝の本体論とは異なる構造をもつものではなかったかという結論を得た。

  単著   『集刊東洋学』   中国文史哲研究会   (97),20-39頁   2007/05


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