キタカゼ ナホコ
  北風 菜穂子   文学部 教育学科   講師
■ 標題
  親密な関係間の性暴力の判断に関する心理学的研究
■ 概要
  本書は親密な関係間で生じる性暴力について予防の観点から検討した心理学的研究の報告である。近年の実態調査では、交際相手や友人などの親密な関係間での性暴力被害(デートレイプ)の割合が高いことが示されている (野坂ら, 2005他) 。このような被害においては、身体的暴力や脅迫は必ずしも存在せず、心理的に強制された状態などを含むため、ステレオタイプと異なり、レイプと判断されないという問題がある。本書の目的はデートレイプの判断に影響を及ぼす要因を詳細に検討し、レイプの発生予防や被害者への早期の支援、二次被害の防止等、親密な関係間での性暴力予防のための基礎資料を得ることにある。
 本書には4つの研究の成果が掲載されている。【研究1】では順序構造分析によるデートレイプの判断の男女差の検討、【研究2】ではデートレイプの判断に対するレイプ支持態度、デートレイプ状況の2つの影響要因の検討、【研究3】ではデートレイプの判断に対するレイプ支持態度、回答者の立場の2つの影響要因の検討、【研究4】では模擬裁判員裁判実験によるデートレイプの判断に対する教育的介入の効果の検討が行われた。
 4つの研究から、第一に、レイプ支持態度がデートレイプ判断に及ぼす影響、第二に、デートレイプ判断における男女差に関する知見が得られた。総合的考察では、マクロ・カウンセリング (井上, 2004) の理論的枠組みに基づいて、デートレイプ被害者に対する包括的な心理支援システムをどのように構築していくかについて、研究成果をもとに論じた。

  北風菜穂子
  単著   風間書房      2019/02


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