ハギワラ モトヒロ
  萩原 基裕   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  代替物の引渡しによる追完と買主による使用利益返還の要否について
■ 概要
  民法562条による追完請求のうち、代替物の引渡しによる追完が行われた場合の問題を扱う。売主が買主に引き渡した目的物に瑕疵などの契約不適合があり、買主が代替物の引渡しによる追完を請求したとする。そうすると売主は買主に対して改めて瑕疵のない代替物を引き渡すことになる。このとき、買主に当初引き渡された契約不適合のある物はどうなるのであろうか。562条等をはじめとして、代替物の引渡しによる追完が行われる場合に当初引き渡された契約不適合物の帰趨を規定する条文はない。買主の権利の目的が契約に適合する物=代替物であるとすれば、当初引き渡された契約不適合物は買主の権利の目的ではなく、また買主に権利が移転することもないと考えられるため、売主に返還されることになる。このとき、買主が契約不適合物を利用することによって利益を得ていた場合、この利益も返還されるべきであろうか。契約不適合物が買主の権利の対象でない以上、そこから利益を取得することも許されないと考えるのであれば、買主は使用利益も含めて返還をするべきである。他方で引き渡された物を利用してはじめてその物に契約不適合があることが判明する場合もある。契約不適合の存在を知らずにそれを使用し、利益を得てしまった買主に対して使用利益の返還を求めることは酷であるとも考えられる。本稿はこのような問題につき、すでに議論の蓄積のあるドイツ民法の学説判例の理論の分析を通じて、解決方向性を模索した。
  萩原基裕
  単著   大東法学   大東文化大学法学部法政学会   29(1),105-144頁   2019/11


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