ハギワラ モトヒロ
  萩原 基裕   法学部 法律学科   教授
■ 標題
  買主自身による追完と売主に対する費用賠償請求の可否をめぐる問題の検討
■ 概要
  本稿は改正民法において新たに導入される追完請求権をめぐり、今後生じるであろう種々の問題の一つを扱うものである。本稿で問題とする場面は、売買契約の目的物に契約不適合があったところ、買主が売主に対して不適合の追完を請求することなく、自ら、または第三者による修繕などを通じた追完をした場合、追完に要した費用を損害賠償として売主に請求できるのか、という場面である。415条に基づく損害賠償のためには、債務者の責めに帰すべき事由が要求されているところ、買主が売主に追完を請求することなく目的物を修繕してしまったということは、売主の責めに帰すべき追完の不履行と言えるのであろうか。そこで本稿では、すでにこのような買主自身による追完という問題を先行して扱ったことのあるドイツ民法における判例学説法理を参考に、解決の方向性を導いた。追完請求をせずに買主自身が追完をした場合には、売主に責めに帰すべき事由がないことから415条に基づく損害賠償は請求することができないが、売主は事実として、追完請求を受けていれば負担する必要のあった追完費用の支出を免れている。この利益を不当利得として、売主から買主に支払わせることで、追完費用の賠償相当額の支払いを認めるべきとの結論に至った。
  単著   大東法学   大東文化大学法政学会   28(2),93-125頁   2019/03


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