オノダ リョウイチ
  小野田 竜一   社会学部 社会学科   講師
■ 標題
  間接互恵状況における感情に駆られた利他主義者のシグナル
■ 概要
  なぜ人間は損失を払っても他者に対して利他行動を取るのだろうか。この問いに対し、神(2007)は感情の機能に注目した。感情は、自己利益が生じないような状況でも利他行動に人を駆り立てる機能を持つ(Frank 1988=1995)。神(2007)は冷静な利他主義者よりも感情に駆られた利他主義者のほうが周囲からの印象がよいことを明らかにした。しかし、神(2007)では、実際に相互依存関係を形成するにあたり、このシグナルが役立つのかどうかは明らかにしていない。
本研究では、標準的な相互作用状況(間接互恵状況)を想定した上で、この問題を解消した。人々が直接返報されない中で、他者への利他行動が回り回って別の第三者から返報される原理が間接互恵性である(真島 2010)。本研究では、「感情に駆られた利他主義者」のシグナルが間接互恵状況において有用に働くのかどうかを検討した。
質問紙実験の結果、利他行動の対象を自ら選ぶ場合において「感情に駆られた利他主義者」のシグナルが有用に働くことが示された。先行研究の結果と比較すると、このシグナルには、間接互恵性の成立にとって重要な情報的価値があることが分かった。

  小野田竜一
  単著   大東文化大学社会学研究所紀要   大東文化大学社会学研究所   (4),73-87頁   2023/03


Copyright(C) 2011 Daito Bunka University, All rights reserved.