クズメ トモヒデ
  葛目 知秀   経済学部 社会経済学科   教授
■ 標題
  『​現​代​社​会​に​お​け​る​企​業​と​市​場​』
■ 概要
  本論文は 1997年7月に発生したアジア通貨危機から 2008年9月に発生したリーマン・ ショック前後までの期間を対象として、国際金融市場や国際資金フローの変化を捉えつつ、 拡張バッファー・ストック・モデルとパネルデータを用いて、アジア 10 カ国(中国、香港、 インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)における外貨準備保有高の変動要因を定量的に分析するとともに、各国の経済状況や市場規模 を考慮に入れた外貨準備保有高の適正水準の推定をおこなった。 分析の結果、国によって程度の差はあるものの、説明変数として人口、対米ドル名目為替レートのボラティリティ、平均輸入性向、当該国と米国の長期金利差が外貨準備保有高に統計的に有意な影響を与えており、国民の生活水準、為替レート変動の柔軟性、経済開 放度、外貨準備保有高の機会費用が変動要因となっていることが示された。さらに、2009 年までは過剰準備であったものの、2010 年以降では逆に過少準備となっている国(中国、 日本、フィリピン、タイ)があることを示している。 リーマン・ショックが発生した 2008 年 9 月まではアジア諸国が過剰準備を抱えていた 点は星河(2010)の結果と整合的であり、そうした国が 2010 年以降に過少準備となって いるので、この時点を境に、各国の経済環境を取り巻く国際金融市場や国際資金フローに おいて構造変化が起きていると考えられる。 一方、パネルデータ分析から、個別効果でも時間効果でも確定的であることが認められており、今後はより詳細な推定式を設定し、各国別の外貨準備高の保有動機を追究する必 要がある。 また、各国で採用されている為替相場制度の差異をコントロールしたり、Aizenman and Marion(2003)において取り入れられていた政治的腐敗度・政治的不確実性といった政治 的な要因を扱うことができなかったので、これらは今後の研究課題としたい。
  ◎奥山忠信(編)・◎張英莉(編)・村田和博・文智彦・磯山優・堂野崎衛・相馬敦・中村健太郎・平野賢哉・葛目 知秀・三浦庸男
  共著   八千代出版株式会社      2011/04


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