クズメ トモヒデ
  葛目 知秀   経済学部 社会経済学科   教授
■ 標題
  Intra-national and International PPP between cities of Japan and South Korea:Empirical evidence using panel unit root and panel cointegration
■ 概要
  購買力平価説の妥当性に関しては、これまで数多くの実証研究が行われてきた。最近では、非定常時系列分析の方法の発展にともなって、主要な関心は、(1)現実の名目為替レートとPPPの乖離または実質為替レート(の自然対数値)が定常過程に従うか否か、(2)名目為替レートと相対価格(各自然対数値)が共和分関係にあるか否か、に焦点が絞られてきている。また、データの利用可能性(観察数の不足)と検定方法の問題を克服するため、パネルデータを利用した実証研究も増加している。そこで、本論文では、日本と韓国の各都市における消費者物価を用いて、日本と韓国の国内の都市間、あるいは両国の都市間において、長期的に相対的PPPが成立するか否かを非定常時系列分析の方法とパネルデータを利用して検証した。分析対象とする都市は、日本の14都市と韓国の6都市の合計20都市、データは1977年4月から2002年12月までの各都市の総合消費者物価指数(CPI)を用いた。まず、財を「総合」を含め14種類に分類し、日本は東京、韓国はソウルを基準として、各都市との相対的な物価変化率(自然対数値)を求めた。次に、国内の都市間の相対的な物価変化率が定常過程に従うか否かをパネル単位根検定を用いて分析した。パネル単位根検定の結果、有意水準に違いはあるものの、両国内の相対的な物価変化率は全ての財について非定常であることが明らかになった。さらに、日本円/韓国ウォンの名目為替レート(変化率)と各都市間の相対物価(変化率)が共和分関係にあるか否かをパネル共和分検定を用いて分析した。その結果、名目為替レート変化率と各国の都市間の相対的な物価変化率の間には共和分関係が存在し、日本と韓国の都市間では購買力平価説が成立する可能性が認められた。今後、日本と韓国間で自由貿易協定(FTA)が締結された場合、上記の分析結果にどのような変化が見出されるのかは研究課題として残されている。
  単著   Discussion Paper No.15-5   Institute of Economic Research, Daito Bunka University   1-45頁   2015/07


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