クズメ トモヒデ
  葛目 知秀   経済学部 社会経済学科   教授
■ 標題
  アジア諸国通貨における購買力平価からの乖離の半減期-中位不偏推定法とインパルス反応関数による分析-
■ 概要
  本論文の目的は1973年2月から 2008年12月までのアジア諸国通貨(インドネシア・ルピア、日本円、韓国ウォン、マレーシア・リンギット、フィリピン・ペソ、シンガポール・ドル、タイ・バーツ)の対米ドル実質為替レートに着目し、購買力平価からの乖離の半減期を推定することである。 推定式には 3種類の単位根検定に用いられる回帰式を応用した。推定方法は、Murray and Papell(2002)などの先行研究で指 摘されてきた問題点を克服するため、中位不偏推定法とインパルス反応関数を用いた。同時に、ブートストラッ プ法(パーセンタイル法)によって、95%ブートストラップ信頼区間も求め、半減期の点推定量 のみならず、区間推定量も求めた。分析の結果、(1)1998 年から 2005年まで固定相場制度を採用していた影響で、マレーシア・ リンギットの半減期が他の通貨と比較して長いこと、(2)すべての通貨において、アジア通貨危機(1997 年6月)後に半減期が短くなっていること、(3)MUEを適用した場合、半減期が無限 大となるケースが増加していること、が明らかとなった。以上の結果はRogoff(1995)が提示したPPP パズル(PPP puzzle)の解決をより困難なものとし、依然としてアジア諸国と米国間の物価調整プロセスと名目為替レート調整プロセスの間に大きなタイムラグが存在し、それが実質為替レートに過度な変動をもたらしていることを示唆している。
  単著   早稲田大学産業経営研究所ワーキングペーパー   早稲田大学産業経営研究所   1-25頁   2009/12


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